尼崎事故で思うこと(2:脱線防止ガード)

さて、次は「脱線防止ガード」についてです。
平成12年3月に起こった、営団地下鉄(当時)日比谷線での脱線事故でクローズアップされたこの機構。簡単に説明しますと、2本のレールのそれぞれ内側にレール(厳密には車輪の載るレールと形が違いますが)を取り付け、車輪が脱線しそうになった際、内側からこの車輪を押さえて脱線を防ぐというものです。
 
このガード自体は大昔から存在するのですが、先に述べた日比谷線脱線事故ではガードがあれば事故を防げた、という調査が発表されてからというもの、「脱線を防ぐには脱線防止ガードだ!脱線防止ガードがあればもう安心!」という、いわば脱線防止ガード神話みたいな雰囲気があります。
 
脱線防止ガードの設置基準はJR各社共通で、半径250m未満のカーブであれば設置の対象になります。もちろん、さまざまな条件を勘案して危険性を判断し、それより大きいカーブであっても設置することもあります。
もちろん、設置基準について所管省庁である国土交通省(というか旧運輸省)の審査が入ることは言うまでもありません。逆に言えば、設置基準については国のお墨付きが出ているということです。
 
で、今回の事故現場には脱線防止ガードが設置されていませんでした。ということは、現行の設置基準などから総合的に判断して、この区間は「設置の必要なし」とされたわけです。決して「必要なのに設置されていなかった」わけではありません。
 
じゃあ、この区間に脱線防止ガードがなかったことは、問題なのかどうなのか?
 
現行の基準に照らし合わせれば、あの区間に設置されていなかったことは正常なことです。
では、現行の基準は果たして十分なものだったのか、となると、これは当事者であるJR西日本だけの問題ではなく、むしろ国土交通省の問題ではないでしょうか。
つまり、技術の発展に合わせてどんどん進化してきた鉄道車両やATSに対し、監督省庁として常に基準の見直しを図る必要があったのではないか?ということです。
 
もちろんJR西日本の手落ち(というか、基準見直しというアクションを自ら起こさない鉄道事業者側の姿勢)を擁護するつもりはありません。しかしながら、JR西日本以外の鉄道事業者もほぼ同じ基準で脱線防止ガードを設置していることを見過ごしてしまっては、同様の事故を防ぐことは出来ないのです。