尼崎事故で思うこと(3:転覆脱線)

さて、昨日のブログで脱線防止ガードについて触れました。
脱線防止ガードが設置されていなかったことについての是非は各種メディアで取り上げられています。当然、設置基準などについて今後議論・見直しがされていくものと思われます。設置基準が強化され、今回の事故現場のように現在は設置基準外であるカーブにも、どんどん設置されていくことになると思われます。
 
ところが。
今回の事故は、脱線防止ガードでは防ぐことが出来ないのです。
 
昨日も説明したように、脱線防止ガードというのは2本のレールのそれぞれ内側に取り付けてあり、車輪が脱線しかけた際に内側から車輪をガードして脱線を防ぐというものです。図がないので説明しにくいのですが、脱線する際の車輪の動きとして、片側の車輪がレールの外側に脱輪したならもう片側の車輪はレールの内側に脱輪するわけで、内側に脱輪しそうな車輪に対してガードが働くわけです。
 
ところで、今回の脱線は「転覆脱線」というものであるということが、警察や事故調査委員会の調査でわかってきました。これはどういうものかというと、急カーブに高速で突っ込んだため、カーブ内側の車輪が浮き上がってしまい、そのまま遠心力で外側に横倒しになる(転覆する)、というものです。
つまり、脱線に際しての車両の挙動は下記のようになります。
 
・通常の脱線(せり上がり脱線など)
 何らかの要因で片輪がレールの外側へ、もう片輪がレールの内側へ脱輪する。
 この時点では、車体は傾いていない(この後にさまざまな要因で傾くことはある)
・転覆脱線
 遠心力などにより、カーブ内側の車輪が浮き上がる(→車体は外側へ傾く)。
 遠心力が強いとそのまま車体は横倒しになる。
 
で、要するに脱線防止ガードというものは、内側へ脱輪する車輪に対して働くものですので、転覆脱線のように内側に車輪が脱輪せず、浮き上がってしまうものに対しては全く意味がないわけです。
 
転覆脱線に対する防御策というのは残念ながらありません。あえて言うのなら、ATS-Pなどの設置により、高速でカーブに進入してしまうのを防ぐ仕組みが有効ということになります。
 
マスコミ・ジャーナリストの連中よ、頼むからもう少し勉強してから報道してくれや。
脱線防止ガードで防止できない脱線もあるんだわ。